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2006年10月に福山市のJA熊野で行われた、広島県藺草・藺製品品評会の様子です。 これだけ高いランクの、しかも生産者の異なる備後畳表を、一度に見られる機会は他にはありません。半日かけて、すべての畳表を見てきました。 |
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農林水産大臣賞に輝いた廣川宏志さんの長髭引通表です。畳屋さんの間では長引と呼ばれている、備後畳表で最高のものです。その年に取れた一番長い抜き寸(一番毛)の藺草で織られます。 経糸も麻打ち(麻二本芯)ですので、打ちこみ(草が詰まっている事)のある、目立ち(畳目の立体感)の良い表に仕上がります。 |
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近づいて見てみます。品種は「せとなみ」という在来種です。昔から「地草」と呼ばれ、伝統があり、藺が固くて厚いため擦れや摩耗に強いこと、そして色が焼けてくると金色または薄茶色のような綺麗な色に退色し、色焼けしてからも新たな味わいが残ります。この福山地方の藺田は山合いに点在し、絶妙な天候状況が絡み合うことで、このびんご地草の特徴が備わると言われています。 3年前にこの備後地草でお寺の本堂を70帖施工しました。先日見させてもらいましたが、藺草の表面に艶が出てビニールのような光沢感がありました。人の足裏の脂が付くことで、藺草の表面に艶が出るのです。擦れて粉が出る中国産とは完全に別物ですし、国産畳表の中でも最高級です。すばらしいの一言です。
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藺草の部でも廣川さんの藺草が受賞です。人の背丈ほどありました。良い畳表を織るためには、良質な長い藺草を育てることに尽きます。ただ長くても、実入りがないような藺草ではダメです。だから難しいのであり、誰もができない努力と技術があるからこそでしょう。
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| 品評会でお忙しい中、廣川さんの工場にお邪魔しました。ちょうど長引表を製織中で、奥様が縦糸にびんご証紙を入れておられました。
もちろんこの日が廣川さんとは初対面で緊張しましたが、優しさのにじみ出る大変温厚な方でした。廣川さんの備後長引表は当店の最高ランクである「生粋無双」として、これからもお客様に勧めて行きます。何と言っても本物は違います。
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(2008.10月)
| 再び品評会に行ってきました。また廣川さんが入賞されていました。会場で廣川さんを見つけ、少しお話を伺うことができました。
新草よりひね(1年前に刈り取った2007年度産の藺草)の方が、表の出来が良いとの事でした。
品評会に出された廣川さんの長引表の写真を大きく引き伸ばしたポスターを作って差し上げた所、織機のある工場に飾って頂いているとのこと。また平成19年京都御所の皇后御常御殿の畳替えに使用された、廣川さんの織られた中継表(予備の物)をお礼にと、わざわざ1枚送って頂きました。大変貴重な畳表を頂きましてありがとうございました。この中継表は、大切に店で保管しております。
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| 龍鬢(りゅうびん)表を製織されている大村さんを訪ねました。龍鬢表は床の間に使われ、赤龍鬢(写真)と青龍鬢があります。
約2週間屋外で干すことで、夜露で藺草に色が着きます。天日でしっかり乾燥させるため、藺草は竹ひごのようにピンと真っ直ぐです。大村さんのお宅の周りには、この天日干しをするためだけに使われる広大な敷地がありました。藺草を一本一本並べますが、雨が降る前には撤収しなければいけません。とても手間暇のかかる工程を経て、この赤龍鬢表が出来上がるのです。