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釜出し作業


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釜出し1
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 「石河さーん」と起こされました。時間は午前2時30分、朝というかまだ夜中です。作業場ではすでに吉住さんご夫婦とご両親の4人が作業を始められていました。私もボーッとしているわけにはいきません。
 これから「釜出し」作業が始まります。工場の乾燥機の上には、昨日の昼前から16時間におよぶ乾燥が終わった約850把の藺草が並んでいます。乾燥させた藺草は細く締まって適度な硬さになり、生草の状態から私たちの知る畳ゴザの藺草へと変化していました。
 これらを一つずつ手作業で取り出して8把ずつ束ね、保管用のビニール袋に入れて2階の倉庫に収納する作業です。


釜出し2
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 藺草を染土除去機にかけます。藺草を振動させておおまかな染土を振り払う機械です。機械にはダクトが付き、染土を吸引して工場の外に排出しています。それでも工場の中は視界を遮るほど、染土の埃が充満しています。藺草を動かす度に染土が煙幕状に漂います。吉住さんの奥様に用意して頂いたマスクの内側に、何枚もの濡らしたガーゼが重ねてあった意味が分かりました。
 こうなると私たち畳店が加工する時に畳表に付着している染土など、染土のうちに入りません。肺に悪影響はないかと心配になるほどの染土煙なのです。


釜出し3
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 私は流れ作業の中の、束ねられた藺草をビニール袋に入れるパートを担当しました。乾燥直後の藺草はまだホカホカで熱いくらいです。乾燥機の余熱と藺草から蒸発した湿気、おまけに染土の煙の中、苛酷な作業がひたすら続きます。汗だくで、シャツは染土で真っ黒になります。最後まで、口を開く人はいませんでした。「ガチャン」「ガチャン」藺草を結束する機械の音だけが響き渡ります。


釜出し4
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 この作業は何時まで続くのか?と考えてしまい、乾燥機の上の残っている藺草に目が行ってしまいます。2時間後、ビニール袋が約100個できてようやく終了、思わず外に飛び出してしまいました。この後、倉庫の2階へこの原草の入った袋を1個1個積んで行きます。織機で織られるまで、長いものは1年間に亘って保管されます。
 毎年7月、藺草農家ではこの作業を1ヶ月間繰り返すのです。肺などに影響がなければ良いのですが。毎日筋肉痛になりそうです。


釜出し5
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 原草を全部2階の倉庫に積み終わる頃、ようやく夜が明けてきました。しかしまだ作業は続きます。今度は昨日刈り取って泥染めしてある藺草を、先ほどの空いた乾燥機に1束1束手渡しして丁寧に並べていきます。整然と並べないと、均一に乾燥がされません。乾燥機は吉住さんの奥さんの祖父が開発したもので、今では熊本のほとんどの農家に普及しているそうです。下から温風が上に向かって抜けていきます。
 この藺草束は刈取機で結束されたもので、これが基準となります。生藺草は水分を含みずっしり重く柔らかいので、持つのが大変です。束ねてある紐を持っていては指がもちませんでした。しかし吉住さんにコツを教わり、根元の部分を鷲づかみにすると楽につかめることが分かりました。持ち方にも基本があるんです。
 約850把を乾燥機に並べ終わる頃、午前6時を回っていました。これから再び16時間の乾燥が始まるわけです。その時の天候や気温・湿度を考慮しながら、乾燥機の温度を決めます。これで午前中の工場での作業は終了、これから少し早い朝食です。肉体労働、実にお腹が減ります。農家の朝食は朝から肉が並びます!ガソリンも補給するようです。朝食が済むといよいよ藺田での刈り取り作業が待っています。


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