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藺草の刈り取り


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刈り取り1
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 午前7時、朝食が終わり藺田に向かいます。藺田は既に全体の2/3の刈り取りが終わっていました。藺草は長く伸びています。初めて藺田に入りました。土が粘土状で、長靴が土に埋まって歩きにくいのです。数メートル歩いただけで、すでにズボンは泥だらけです。
 まずハーベスタ(刈り取り機)の操作方法を教えてもらいます。変則ギヤや刈り取り部分の昇降スイッチ、回転数の調整つまみなど、車よりも操作ボタンが多くなかなか理解できません。吉住さんに「とにかく一度動かして見てください」と言われ、100m先の藺田の向こう側に走らせます。どの藺田も長さがおよそ100mあります。そしてこちら(道路)側に向かって刈り取ります。ハーベスタの動きが鋭角で、なかなか藺草の最初の列に合わせられませんでした。


刈り取り2
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 ハーベスタは2条刈りで、藺草を2列ずつ刈って行きます。センサーが搭載されており、一度合わせてしまえばあとは自動操縦です。刈り取りを始めると、しばらくしてボコッという音と共に、直径20cm位に結束された藺草の束が飛び出します。それを後部に順番に並べて行きますが、きちんと並べないと崩れてきて最後の分まで載りません。朝刈りの藺草は夜露の水分を含んでいるのでずっしり重たく、また長くくにゃくにゃして扱いにくいのです。しかしやっている内に、それなりに慣れてきました。しかし見た目よりもかなり力のいる作業です。


刈り取り3
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 藺田の端から端まで100m刈り取るのに、約20分くらいかかります。戻ってくると藺草をハーベスタから降ろし、農道に置いてある鉄枠のケージに詰めかえます。藺草束を約140束、きちんと一束一束並べて入れます。この作業は二人の呼吸を合わせて行います。一人は藺草を降ろし、もう一人がケージに詰めます。藺草の表面にに傷が付くと、乾燥してから残ってしまいます。藺草束を抱きかかえるように、丁寧に手渡します。作業が中断する時などは、陽が当たらないよう藺草にゴザをかけて保護しておきます。


刈り取り4
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 時には藺草を踏みながら、均等に積んでいきます。ちょうどこの頃、夏の太陽が容赦なく照りつけます。体力的にも朝からのピークかもしれません。藺草を詰め終わると、用水の水で5分から10分ほどシャワーをかけます。これは藺草を冷やすと共に、次の工程である「泥染め」で染土が均等に付着しやすくするためです。
 シャワーが終わると、リフトでケージごと工場へ藺草を運びます。


刈り取り5
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 生産農家の工場には、ケージがすっぽり入るコンクリートのプールがあります。このプールに染土を溶かしておき、先ほど積み替えた藺草をケージごと沈めます。写真は生産者下永辰也さんの泥染めの様子です。下永さんは最新のシステムを採用しておられます。次の乾燥工程では、乾燥機にこのケージごと乗せれるようになっており、一束一束手積みする必要がありません。ただ設備投資にかなりのお金がかかるとお聞きしています。
 ひのみどり草の場合、ひのみどり染土と三原染土を一定の比率で混ぜ合わせて溶かします。中を覗いて見ましたが、かなり濃厚な液体で、コンクリートのような色です。泥染め工程はケージごとプールに漬けるだけなので、特に手伝う作業はありません。しかし昔は藺田に穴を掘って、そこに染土を溶かしてすべて手作業で泥染めしたそうです。
 泥染めが終わった後に、プールの周りの染土をブラシで流しながら掃除をします。これがなかなか重労働です。染土は細かい粘土質なので、コンクリートなどに付着するとホースで水を撒く程度では流れません。デッキブラシで擦りながら水と共に流す必要があります。
 この泥染め工程により、藺草は均一に乾燥し、表面に染土のコーティングがされることで藺草の成分が閉じ込められます。新しい畳の香りは、この泥染めによってもたらされるのです。昔の人はよくこんなことを思いついたものです。
 泥染めが終わると再び藺田に向かい、夕方または明日の早朝に刈り取る藺草にかかっている「網」を外します。


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